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捨てられる花がもったいない! 花の再生紙をつくる発想はいかにして生まれたか ローランズ ・福寿満希さん

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ローランズ代表・福寿満希さん

原宿駅から、竹下通りの喧騒を横目に10分ほど歩いた閑静なエリアに、緑あふれる明るい花屋&カフェがあります。
 
一見普通のおしゃれなお店ですが、実はここのお店は特別な使命をもって運営されているもの。障がいのある方もない方も生き生きと働ける場を実現したいと、20代の女性起業家が立ち上げたお店なのです。
 
しかも、売っているものはお花や珈琲やフードだけではありません。なんと「紙」の卸売をしています。
一体なぜ、このかわいらしいお花屋やさんが紙の卸売をしているのか? 大量の紙製品を扱う本屋稼業に携わるものとして好奇心をかきたてられ、その秘密を知りたくて、代表の福寿満希さんをたずねました。
 
取材・文=SPBS編集部・K子
写真=横尾涼

スポーツ界からソーシャルビジネスに目覚め、花の世界へ!?

──福寿さんは、もともとスポーツマネジメントの会社にいらしたそうですね。
 
福寿:はい。高校まではマルチナ・ヒンギス選手に憧れて、本格的にテニスに打ち込んでいました。でも、トップアスリートになるにはやはりかなりハードルが高いことを知りました。ケガをしたこともあって、私はスポーツを支える側の道を探して、スポーツマネジメントを学べる大学に進みました。
 
──それで就職は最初からスポーツマネジメントの会社をめざしたんですか?
 
福寿:それが、実はそうではなかったんです。スポーツと全く関係ない業界で内定を頂いたのですが、「何か違う」と大学4年の秋に内定を辞退しまして。もう一度初心に返ってスポーツマネージメント会社1本で探して、最後に「ここだ」と思った会社は募集もしていなかったんですけど、履歴書を持ち込みでアタックしたんです。それで運良く入社が決まりました。
 
──そこではどんなお仕事を?
 
福寿:いろいろなプロジェクトに関わったんですけど、プロ野球選手の社会貢献活動のマネジメントはメインで担当していました。社会貢献活動をするのは、アメリカのメジャーリーガーにとっては当たり前のことなんですが、日本ではまだ多くありません。そんな中で、自社がマネジメントしている野球選手は、積極的にそういう活動をしていこう、というのが上長の方針だったんです。具体的には、選手が畑を借りて子ども達と作物を育て、食の大切さを伝えるとか、球場の年間シートを買い取って、恵まれない環境にいる子どもたちを招待するとか、さまざまな形があります。
 
──すてきなお仕事ですね。……でもそこから、なぜ花屋に?
 
福寿:選手が行う慈善事業として社会貢献活動をしていると、その選手の引退とともにその活動も終わってしまうことがあるんです。だから本当に良い活動を続けたいなら、事業として収入を確保しながら回していく必要があるな、ということを痛感して、ソーシャル・ビジネスに興味を持ちました。それと、学生時代にとったスポーツ心理学の授業で、花や緑に触れることが心に良いということを勉強したのを思い出しました。それで社会貢献活動の仕事から異動になったのを機に、独立して花の仕事を始めることにしました。

お花が溢れんばかりの原宿店の様子。選ぶだけでも楽しい(ローランズ WEBサイトより)

ネットで、花屋で教えを請う

──それはまた、全然違う世界への転身ですね。花についてはどのように勉強を?
 
福寿:起業前の半年くらいは、スポーツの仕事を続けながら、週末だけ一人で、アレンジメントの勉強をしたり、展示会に出展したりしていました。最初はネットでアレンジメントの仕方や、お花の保管方法などを調べたりしていたんですが、花関係者から基礎はしっかり勉強した方がいいよ、とアドバイスされて、近くのお花屋さんに修行させてください、って飛び込んだりしました。そこから、展示会で会った会社の代表の方から装飾のお仕事をいただいて、起業した初期をつないでいました。
 
──就活時代から、相手の懐に軽やかに飛び込む行動力がすごいですね! そこから花屋に?
 
福寿:いえ、実は店舗よりも、再生紙を作った方が先なんです。花屋で修行をしていたときに、まだきれいな花でも、商品にならないものがたくさん捨てられていくのがもったいないと思って、何かできないかなと、ノートを広げて色々考えていたんです。こういう“一人ブレスト”、好きなんです! その中で、捨ててしまう花を使って、紙ができないかな、ということを思いつきました。色々と調べると、お花の茎は繊維がしっかりあって、紙に向いているんじゃないかと思ったんです。
 
──その発想がいいですね! でも紙って、どうやって作るんですか?
 
福寿:またネットでいろいろ調べると、紙工場って、大きなロットでしか受注しないんですね。30件くらいひたすら連絡して、1件だけ、小ロットでA4サイズ4万枚分で受けてくれるところが見つかりました。しかし発注額は、当時の私にとっては大金でしたから、2、3日悩んで、思い切ってお願いすることにしました。いきなり大きな機械では試せないので、最初は私が手持ちした10本のカーネーションで、手すきで試作してくれました。再生紙は、古紙に繊維を混ぜて作るんですけど、すぐにカーネーションから紙に必要な繊維がとれることがわかって、古紙と花の割合をいろいろ試して、紙を作る方法が決まって、次はまた材料の調達が……。
 
──今度はどんな体当たりなんでしょうか(笑)。

廃棄されるカーネーションを混ぜた再生紙でつくったスケッチブック。丸い紙は、バラの花を混ぜて手すきでつくられた試作品

トラック一杯の廃棄花をもらいうける

福寿:最小ロットの再生紙を作るのに、花が200キログラム必要だと言われたんです。それも、少しずつではなくていっぺんに。とても私が手持ちできる分量ではないですし、廃棄されるお花も、修行しているお店だけでは足りません。どうしようと思ったときに、就職のときにお世話になった方が、日比谷花壇さんとつながりがあったことを思い出して、コンタクトしてみました。その方に、日比谷花壇さんをご紹介いただいて、母の日の後に大量に廃棄されるカーネーションを200キログラムいただけることが決まりました。
 
──確かに、母の日後のカーネーションは大量にゴミになってしまいそうです。しかも事業者は廃棄するにもコストがかかりますからね。すばらしい着眼点です!
 
福寿:いまではだいたい1年に2ロットくらいの紙を作っていて、自社の名刺や他社さまの名刺、製品としてスケッチブックを作っています。
 
──風合いもやさしくて、すてきな紙ですね。少し厚めにしたら、グリーティングカードなんかにも良さそうです。
 
福寿:花の第二の人生をつくる、という思いを込めて、この事業は「Flower Ringプロジェクト」と名付けています。花の再資源化の活動を通じて、花と人と環境が笑い合うような大きな輪になるといいなと思っています。
 
──まさに、花の命が循環していく社会貢献活動ですね。
 
(障がいのある従業員の雇用をどのように進めているのか? 次回につづく)

<プロフィール>

福寿満希(ふくじゅ・みづき)さん
1989年石川県生まれ。順天堂大学でスポーツマネジメントを学び、卒業後はマネジメント会社でプロスポーツ選手の社会貢献活動の企画運営などを経験。花に関わる仕事を立ち上げ、2013年に株式会社LORANS.を設立。ホテルロビーの装飾やイベントのフラワーデザインなどを行う。現在都内で2つの花屋&カフェを運営し、障がい者雇用にも積極的に取り組む。行政や企業などと組んだ花のイベントの実施や、花を使った再生紙の製作、企業の障がい者雇用のプロデュースも手がける。

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