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人気ベーカリー〈マンマーノ〉「スキージャンプを諦めた20歳の僕には、パン屋以外考えられなかった」【SPBS奥渋谷界隈探訪】#05

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パン屋〈マンマーノ〉店主の毛利将人さん

先日、オープンから10周年を迎えた奥渋谷のパン屋さんがあります。代々木上原駅から徒歩1分、パリ16区をイメージした外観が印象的な〈マンマーノ〉。オーナーでありながら現場に立ち続け、パンのことを考え続ける職人、毛利将人さんの人生から〈マンマーノ〉を探ります。
 
文・写真=日本パン図鑑。
 

スキージャンプの選手だった10代

──12歳の頃からパンを焼くようになったそうですが、焼くようになったきっかけはなんだったのですか?
 
毛利:僕の出身は東京なんですが、昔スキージャンプの選手をやっていて、12歳の頃にトレーニングのために札幌に移り住んだんです。その時に住んだマンションの下が、パン屋さんだったことがきっかけです。そこのオーナーの方と仲が良かったんです。ある日、お店が人手不足になった時があって、学校帰りにパンの配達をお手伝いしながら、パンを焼くようになりました。
 

 
──その頃から、将来パン屋さんになろうと思われていたのですか?
 
毛利:ものづくりが楽しくて、それがたまたまパンだったという感じですね。パン屋になろうと思ったのは、20代前半の頃です。それまでずっとナショナルチームでスキージャンプをやっていたんですが、葛西紀明選手のようなレジェンドになれるのは本当に一握りの人間なので、そこから先の人生を考えた時に、パン屋さんになろうと思いました。それ以外は考えつかなかったですね。
 
──それはやはり、パン屋さんのお手伝いをされていたからですか?
 
毛利:そうですね。札幌のパン屋さんのオーナーは、僕の師匠でもあります。僕がお店をオープンする時、師匠は自分のお店そっちのけで札幌から東京に出てきて、すごく手伝ってくれたのがとても心に残っています。
 

海外で武者修行の20代

──パンの道に進まれたのは、師匠との出会いが大きかったのですね。その後、本格的に修行をされたのですか?
 
毛利:武者修行制度という制度があって、パリに行きました。その後、イタリア、ベルギーのパン屋さんで修行をしました。イタリア、ベルギーでは向こうの学校にも行って、イタリア料理やベルギー料理について勉強していました。このお店には、パリ、イタリア、ベルギーでのいろいろな出会いがつまっています。
 

 

自分のお店を持った30代

──店名である「マンマーノ」もフランス語とイタリア語で「手づくり」という意味の言葉をかけ合わせたのですよね?
 
毛利:はい。お店の外にある紋章のようなマークも、フランスで出会った日本人の紋章デザイナーの方に描いてもらったんです。犬が好きなので当時飼っていた犬、麦を使っているので麦、辰年なのでドラゴン、勝ち戦の星、マンマーノの店名でもあり自分の名前でもあるMなど、マークに入れてほしい想いを伝えて描いてもらいました。
 

 
──店内のデザインも海外で修行をされていた頃の影響が強いのですか?
 
毛利:店内の柱のモザイクタイルはそうですね。ベルギーで1700年くらいに始まったお菓子屋さんで全面モザイクタイル貼りのお店があって、本当は内観を全体的にモザイクタイルにしたかったんですが……とても重いイメージになってしまうので一部にしました(笑)。
 
──今日でオープンから10周年を迎えられますが、これまで大変だったことはありますか?
 
毛利:経営ですね。パンをつくるだけなら幸せですが、やはり経営をしていかなければいけないので、傾いた時期は大変でした。実は火の車になっていたことが何回もあります。
 
──それは意外です。食べログ百名店にも選出されるなど、とても順風満帆な印象があったので驚きました。
 
毛利:いやいや、波だらけですね。この辺りにもたくさんパン屋さんがありますが、今後もさらにパン屋さんは増えて淘汰されていくと思うので、日常での情報収集を怠らないようにしています。話題のレストランやケーキ屋さんに行ったり、コンビニのパンを食べてみたり、さまざまな方とお話したり、とにかく外に出て自分の足で得た情報を元に改善を繰り返しています。なので、パンの半分以上はオープン当初の頃とはまったく違っていますね。
 


 

進化し続けたい40代

──競争が激しいパン業界の中で、常に情報収集と改善を欠かさない姿勢が、今のマンマーノに繋がっているのですね。それでは最後に、今後の夢や野望はありますか?
 
毛利:うちのお店は、北海道産小麦100%でつくるなど、材料にこだわっています。いつかは、牛乳などの材料も自分たちでつくりたいです。そういうこともやっていけたらいいなと思います。
 

 
24時間パンのことを考え続ける職人の情熱を強く感じました。
改善を繰り返し、進化を続ける10年目のマンマーノも目が離せません。
 

Boulangerie et Cafe Main Mano(ブーランジェリー&カフェ マンマーノ)

東京都 渋谷区西原3-6-5 MH代々木上原1F(08:00~20:00 L.O. 19:30、毎週火曜・第一月曜定休)

 

毛利将人(もうり・まさと)さん

小学校6年生の時、たまたま1階がパン屋であるマンションに移り住んだことがきっかけで、12歳から、同氏が今でも師と仰ぐ某人気店のシェフからパンづくりを教わる。パンづくりの面白さや奥深さに開眼し、趣味ではなく実際に売り物のパンを同師の店でつくり続け、21歳で渡仏。パリで5つ星の名門ホテル・ド・クリヨンの約300年の歴史の中で、日本人として初めて製パンシェフに就任。
また、イタリアやベルギーでも修行し、帰国後もリーガロイヤルホテル東京で3年間 シェフを務めた。パン一筋20年、2008年12月、念願の店をオープン。

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