ファッション界きっての本好きとして知られるトップスタイリスト、伊賀大介さん。以前SPBS本店でも選書をしていただき好評を博しました。そして、伊賀さんが『MEN’S NON-NO』で連載されていた「伊賀文庫」を見て、「名前が似てる!」と盛り上がってしまった“エア本屋”「いか文庫」店主にしてSPBS本店店長・粕川が、是非にとお願いし、同じテーマで一つずつ選書するという贅沢な企画を提案! 同じ本好きでも、手に取ってきた本は大きく異なる二人が、今だから読んでほしいオススメの一冊を、それぞれに宛てたお手紙でご紹介していく連載です。二人の世界は平行線のまま、交わることはあまりないけれど、自分では見つけることができない本を紹介し合うことで、思いもよらなかった価値観や、「オルタナティブ」な考え方を発見することができるはず。 新しい出会いに期待して「平行線選書録」と称し、今回は予告編として、連載への意気込みと見所を語っていただきました。
文=伊賀大介、粕川ゆき
写真=SPBS編集部
ロゴデザイン=坂脇慶
伊賀さんへ
あれはもう5年ほど前、お店も商品も無いエア本屋「いか文庫」が、雑誌『MEN’S NON-NO(メンズノンノ)』に奇跡的に特集していただいた時のことです。本屋に並ぶ『MEN’S NON-NO』を嬉々として手に取り、「さぁ!いか文庫のページだ!」と、イカ墨をはく勢いでページをめくろうとした直前、「伊賀文庫」という名称があることに気が付きました。そう、当時連載されていた、伊賀さんの本の連載です。
「に!似てる!!」と、動揺し、興奮。さらに「これはいつか伊賀さんに会える日が来るに違いない……!」なんて無謀な予感を抱きました。そしてその“エア”本屋の予感は、ついに“リアル”になりました。会えるどころか、一緒に連載をスタートさせる日がやってくるのです!ギャー!
きっと私の数万倍も本を読んでいらっしゃる伊賀さんなので、畏れ多さもあります。でも、伊賀さんに「こんなの読んだことないぜ!」と言ってもらえるような、イカした紹介ができればとも思っています。そして、まるでダイオウイカに出会えた衝撃のような、新しい本との邂逅を!その未知の世界の喜びと楽しさを!読者の皆さんに伝染させたい!その一心でがんばります。どうぞよろしくお願いいたします!<コ:三!!
いか文庫店主、SPBS本店店長 粕川ゆき
粕川さんへ
なにか、一つだけありゃ大丈夫だ。
貴方と私、産まれも育ちも性別も出身地も食べ物の好みも音楽の趣味も好きな芸人も人生ベスト映画も、ほぼ全てが違っても。
多様性、なんて広義な話をしてるんじゃなくって。
貴方も僕も、本を読む。
印刷された文字の海に漂いながら、知らないことや、行ったことが無い場所や、他人の記憶や、夢や、呪いや、願いの中に滑り込む。
読みたい物がありすぎて、しかし確実に殆ど読めずに死んでいくであろう絶望を感じながら。
バンドT着てるヤツとダチになるのは容易いことだが、マンガだと軽く違って来る。
ましてや本なんて!!!
と、思っていたが、この度こんな出会いがあった。
自分がいかに知らないか、を知るために始めてみよう。
違いを楽しむために、進んで行こう。
濁点一つで、世界が180度変わるってことを感じてみよう。
さーさー皆様お立会い。
「いか」と「いが」の袖が擦りあって、多少の縁が産まれました。
何処へ行くのか、二人ともサッパリわかりません。
が!今一つだけ確かなのは、両人とも「本」を偏愛してるということだけです。
どうか最後迄、お付き合いの程よろしくお願い致します。
伊賀大介
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新連載、「『いが』と『いか』の、
伊賀大介(いが・だいすけ)さん
1977年 、西新宿生まれ。96年より熊谷隆志氏に師事後、99年、22才でスタイリストとしての活動開始。雑誌、広告、音楽家、映画、演劇、その他幅広いフィールドで活躍中。 [写真:佐内正史]
粕川ゆき(かすかわ・ゆき)
1978年、山形県生まれ。実店舗の無い“エア本屋”「いか文庫」の店主として活動するほか、SPBS本店店長も務める。書籍、雑貨のセレクトのほか、フェアやイベント企画など、店舗全体の運営に携わる。