「うさぎは なみだを なくしてしまった おんなのこの かわりに あかいめに ぴったりの なみだを ながしてあげました」
だれかの話を聴くことが仕事のうさぎの前に現れたのは「自分を失くしてしまった」というひとりのおんなのこ。
涙さえも自分のものではなくなった彼女のこころを想い、うさぎはとてもやさしい涙を流すのでした。
だれかの内側で生まれた言葉が、器となる別のだれかに注がれるとき、あなたとわたしの境界線はとても曖昧なものになってゆく。分け合うことのできない気持ちをばらばらの質量で抱えることになる。
銀色と黄色、そこに差し込まれる赤色が織りなす、とても儚げで、微かに震え続ける世界。
人の心を癒すものは、どこにあるのでしょうか。
2018年ドイツの「世界で最も美しい本コンクール」銀賞受賞作品『くままでのおさらい』のスピンオフ作品として誕生した本作は、井上奈奈さんによる祈りと再起の物語です。
著者:井上奈奈
発行:ビーナイス
刊行日:2025/7/31
サイズ:10.8 x 12.8 x 21.6 cm、22ページ